「グレーゾーン金利」で過払い金が発生する
「利息制限法」という法律が、消費者金融会社がお金を貸すときに適用され、この法律により貸金の利息の上限は次のように定められています。
- 元金10万円未満なら年利20%まで
- 元金10万円以上 100万円未満なら年利18%まで
- 元金100万円以上なら年利15%まで
2010年までは利息制限法に違反して金利が超えたとしても、「出資法」という別の法律の制限である年利29.2%を超えない限り貸金業者に対する罰則が無く、貸金業者の多くが利息制限法は超えるが出資法は超えない範囲の29%などの利息で貸付けをしていて、これがいわゆる「グレーゾーン金利」と言われるものです。
このようにして借主が払わされたグレーゾーン金利から、本来払うべきだった利息制限法の金利を引いた差額を、過払い金と呼んでいます。
過払金返還請求とは
過払い金がいくらかを「引き直し計算」をして洗い出す
「引き直し計算」とは
「利息制限法に従った金利で計算したら借金額はどうなるのか」を計算し直すことを言います。
ですから、自分に幾ら過払い金額があるのかを把握するためには、引き直し計算をして確認します。
例えば、グレーゾーン金利である29%の金利で100万円借りたとします。
計算では、1年後には利息として29%にあたる29万円が付き、借金の総額は129万円となります。
しかし本来なら利息制限法により、100万円の借入では利息の上限は15%までです。
本来の金利であれば1年後には15%にあたる15万円の利息で、115万円の返済義務しか無いわけですが、言われるがまま1年後に129万円を支払うと、129万円-115万円=14万円を余分に払い過ぎていることになります。この14万円が、返ってくるべき過払い金として返還請求出来ることになります。
上記の計算式自体は解りやすいように単純にしていますが、通常では返済を何度か分割でしていたり、返済途中でまた借り入れたりと、取引が何回もあるので、実際の引き直し計算となると、かなり複雑なものになってきます。
分割で返済した場合
例えば、100万円借りた人が、月々25000円(1年に30万円)ずつ返していくとして、年利29%で借り入れた場合は下表のようになります。
年利29%で借りた場合 | |
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月々の平均利息 | 17904 円 |
月々の実質返済額 | 7096 円 |
完済までの支払回数 | 143 回 ( 11年 11ヶ月 ) |
完済までの利息合計 | 2,560,294 円 |
完済までの支払合計 | 3,560,294 円 |
この借入を完済するには、11年 11ヶ月間 掛かる計算になります。
これを、利息制限法に従った金利で計算し直し、利率が15.0%とした場合は 完済までの支払回数は143 回から56 回と 87回分少なくなり、返済期間が 7年 3ヶ月短縮されます。
年利15%で借りた場合 | |
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月々の平均利息 | 7052 円 |
月々の実質返済額 | 17948 円 |
完済までの支払回数 | 56 回 ( 4年 8ヶ月 ) |
完済までの利息合計 | 394,927 円 |
完済までの支払合計 | 1394927 円 |
そして 完済までの利息合計は2,560,294 円から394,927 円になり2,165,367円も返済金額に差が出て、この分が過払い返還請求の対象金額になると言うわけです。
過払金返還請求の注意点
債務が残る状態では返還請求出来ない
過払いとは、利息制限法を超過した金利を元本に充当した結果、元本も払い過ぎている状態のことを言います。
引き直し計算をしても債務が残る状態は過払いではないので、返還請求をすることはできません。
払い過ぎた利息は元本に支払ったとみなされるからです。
引き直し計算をして債務が残る場合は下記の方法を検討したほうがいいでしょう。
- 過払いになるまで払い続けてから請求をする(または債務不存在の確認)
- 支払いを続けるのが困難なら特定調停等をする
- 貸金業者に「利息を下げろ」と直接交渉をする
時効を過ぎていないか
過払い金返還請求の時効は完済した翌日から10年が経過していると時効が成立して、返還請求が出来なくなります。
ただし、悪質な取り立てなどがあれば不法行為とみなされ、通常の期限とは異なる「消滅時効は損害を知った時から3年」と言う特別ルールがあるので、完済後10年以上が経過していても損害賠償を求めて請求することが可能な場合も有ります。
利息をつけて請求する
引き直し計算をしてはじき出した請求金額に、5%の利息を加算して請求する事ができますので自分で請求される方は忘れないようにしましょう。
過払金返還請求の手順
個人の請求に直接応じる業者もありますが、ほとんどの業者は弁護士や司法書士を介するか、訴訟をしなければ請求に応じないようです。
1.取引履歴を取り寄せる
貸金業者には、取引履歴を開示する義務があると最高裁判決が出ていますので
各社の開示手続きの窓口に取引履歴を請求すれば入手することが出来ます。
2.計算ソフトをダウンロードする
インターネットで検索すれば無料で利用できるソフトが見つかります。
3.引き直し計算をする
4.取引履歴の一部しか開示されない場合
推定計算か残高無視計算の、金額の高い方にすれば良い。
貸金業者の本社宛に、「過払金返還請求書在中」と書いて送れば良い。
内容証明の他、配達記録、引き直し計算書、FAXでも可。
内容証明は文字数などの規定があるのでそれに従う。
この段階で請求に応じてくれる業者はほとんどないので、引き直し計算後、即訴訟しても構わない。
1.訴状の提出先
基本となる金額は引き直し計算書の「残元金」。
この金額が140万円以下は、簡易裁判所
140万円を超える場合は、地方裁判所で提出時には印鑑を持って行く。
2.代表者事項証明書
最寄りの法務局で取得(一通千円)し、登記事項証明書交付申請書に記入。
訴訟しようとしている会社の住所が必要。
これを訴状と一緒に裁判所に提出する。
登記中で取得できなくても、後日提出すると言えば訴状を受け付けてくれる。
3.訴状に貼る印紙の額を計算する
1.和解
相手の提示した金額で納得したら和解しても良い。
納得できなければ判決まで。
2.訴えを取り下げる
和解金の入金を確認したら訴えを取り下げる。
第一回期日以降の取り下げは被告の同意が必要なので同意書を郵送してもらい、一緒に提出する。
第一回期日前に訴えを取り下げ、手数料還付の申し立てをすると、印紙代金の一部を返還してもらえる。
(訴状に貼った印紙代金の半額、印紙代金の半額が4000円未満の場合は納めた印紙代金から4000円を差し引いた額。)
●裁判所で和解し和解調書を作成した場合は訴えを取り下げる必要はない。